契約書は必ず作らなければいけないのか?(契約の基本・第2回)

契約書は必ず作らなければいけないのか?(契約の基本・第2回)

前回のおさらい

弁護士の矢内良典(やないりょうすけ)です。

契約をテーマにした連載、『契約の基本』の第2回は、「契約書は必ず作らなければいけないのか?」です。

初めに前回のおさらいをしましょう。

contract契約書はどういうときに作るべきか?(契約の基本・第1回)

はじめに
こんにちは、弁護士の矢内良典(やないりょうすけ)です。

今回からは、『契約の基本』と題して、「契約」というテーマに…

前回は、

  • 「法的拘束力のある約束・合意(=契約)」をする場合には、契約書を作るべきである。
  • 契約書には「当事者の行動指針」と「裁判所の判断基準」の2つの役割がある。

といったことなどを解説しました。

それを踏まえて今回は、「契約をするときは必ず契約書を作らなければいけないのか」ということをご説明したいと思います。

では早速見ていきましょう。

契約書の位置づけ

例のごとく最初に答えを言ってしまいます。

契約書がなくても、契約は成立します。

ここは、みなさん勘違いしがちなところです。

「意思主義」という考え方からくるもので、当事者の意思の合致さえあれば、契約書がなくとも契約は成立するのです。

平成29年5月26日に成立した改正民法では、このことが法文に明記されています。

(契約の成立と方式)
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

特に第2項に注目してください。

「契約の成立には書面の作成を要しない。」とはっきりと書かれています。

つまり、契約書の作成は、契約の成立要件ではない、契約のための必須条件ではない、ということです。

では、契約の成立要件でもないのになぜ、「契約書」というものが社会でこれほど重要視されているのでしょうか。

契約書の証拠としての価値

前回の記事で、

  • 契約書は、当事者がどんな内容の契約をしたのかを示す「証拠」です。

という説明をしました。

さらに踏み込んで言うと、契約書は、現在の裁判実務上、あらゆる証拠の中でも最も重要な証拠の一つです。

なぜそうなのかは、次回以降に解説します。

いずれにしても、契約トラブルに巻き込まれたとき、しっかりとした契約書があれば、自分の権利を守ることができる確実性がグッと高まります。

契約関係の相談を受けたのに契約書の存在に触れない弁護士は、おそらくいないでしょう。

もちろん私自身も、契約トラブルの相談を受けた際は、まず契約書の有無を聞き、その中身を見せてもらいます。

契約によって発生した権利関係を確定する上で、「契約書」はそれほど重要なのです。

まとめ

・契約書は契約の成立要件ではない(契約書が無くても契約は成立する)。

・契約書は、裁判実務上、最も重要な証拠の一つ。

次回(第3回)は、「なぜ契約書はそれほどまでに重要なのか?」を予定しています。