契約書はどういうときに作るべきか?(契約の基本・第1回)

契約書はどういうときに作るべきか?(契約の基本・第1回)

はじめに

こんにちは、弁護士の矢内良典(やないりょうすけ)です。

今回からは、『契約の基本』と題して、「契約」というテーマについて、数回にわたり書いてみたいと思います。

最終的には、いい契約(書)とは何か、いい契約(書)を作るためにはどうしたらいいのか、というようなところまでお話しできたらと思っています。

初回の今回は、「契約書はどういうときに作るべきか?」です。

以下の記事を読む前に、ぜひ、みなさんも改めて考えてみてください。

それでは見ていきましょう。

契約書を作るべきとき

いきなりですが、答えを言ってしまいたいと思います。

契約書を作るべきときとは、「どうしても守ってほしい約束(=契約)をするとき」です。

どんな約束だって、どうしても守ってもらいたいものには違いない、というご意見はごもっともです。

私の言う「どうしても守ってほしい約束(=契約)」とは何なのか。この点を、「ただの約束・合意」と「契約」の違いという観点から説明してみたいと思います。

「ただの約束」と「契約」の違い

ただの約束・合意と契約とは何が違うのでしょうか?

ひとことで言えば、「法的拘束力」の有無です。

法的拘束力があるから契約なのか、契約だから法的拘束力があるのか、という話はここでは横に置いておきましょう。

とにかく、契約とは、当事者に法的拘束力を生じさせる約束・合意のことだと理解してください。

では、その「法的拘束力」とはいったい何なのでしょうか。

法的拘束力とは?

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様々な説明の仕方がありますが、ここでは、「最終的に裁判所に訴えて履行を強制したり損害賠償を求めたりできること」と説明しておきたいと思います。

例えば、ある夫婦が食卓を囲んでいるとしましょう。

夫が妻に「お醤油とってくれない?」と頼み、妻は一旦は「わかった」と言いました。

しかし、妻は結局醤油をとってくれませんでした。

このとき、妻が約束を破ったからといって、裁判所に対して「醤油受け渡し請求」の裁判をしたいと言っても、おそらく裁判所は取り合わないと思います。

「お醤油をとってあげるという合意」には法的拘束力がないからです。

「お醤油をとってあげるという合意」は、「どうしても守ってほしい約束(=契約)」とはいえないのです。

他方で、「代金300,000円でWebページのデザインをする」ということを内容とする合意の場合には、契約書を作成する意味があるような気がしませんか?

もちろんあります。

このときは、当事者のそれぞれに、「300,000円を支払う義務」や「Webページのデザインをする義務」といった、法的拘束力のある債務が発生するからです。

では、なぜ、法的拘束力のある合意をするときに契約書を作るべきなのでしょうか。

最後にこの点を、契約書の役割という観点からご説明したいと思います。

契約書の役割

契約書は、当事者がどんな内容の契約をしたのかを示す「証拠」です。

そして、その契約書には大きく分けて2つの役割があります。

1つは、契約当事者の行動指針という役割です。

当事者はまず、契約をしたからにはその内容を守らなければなりません。

そのとき、相手に対しても、そして自分自身に対しても、その契約にしたがって何をしなければならないのか、何をすれば足りるのか、を明示する役割を果たします。

もう1つは、裁判所の判断基準としての役割です。

相手が契約の内容を守らない場合、裁判所に訴えて履行を強制したり、損害賠償を求めたりできることは既に説明しました。

しかし、実際の裁判の場面に目を向けてみると、いくら「こういう契約をしました」と口頭で主張してみても、なかなか裁判所はその内容を認めてはくれません。

客観的な証拠が必要なのです。

多くの場合、契約書は、客観的な証拠として、大きな力を発揮します。

まとめ

・契約書は、「どうしても守ってほしい約束(=契約)」をするときに作るべきである。

・契約とは、当事者に法的拘束力を発生させる約束・合意である。

・法的拘束力とは、裁判所に訴えて履行の強制や損害賠償を求めたりできることである。

・契約書には「当事者の行動指針」と「裁判所の判断基準」という2つの役割がある。

次回(第2回)は、「契約書は必ず作らなければいけないのか?」を予定しています。